甘酸っぱい思い出8月2日〔甘酸っぱい思い出〕 帰国してから1日が過ぎた。 お土産を確認しながら、旅行中の様々な出来事を思い出している。 その中の1つ、あなたにとっては ”どうでも良い”と思われる話ですが、NIJIの甘酸っぱい思い出を聞いてくだされ~!(^^;)ゞ それは、帰国日の前日の出来事である。 観光が終わって、それぞれが部屋に帰り、人の姿もまばらになったホテルのロビーでの事である。 トイレから戻って来たNIJIの姿を見つけたアシスタント・ガイドの王ちゃんが、大きな声で「ちょっと待って!」と呼び止めた。 そう言うと、ショルダーバッグの中に手を入れて何かを取り出そうとしている。 「どうしたの?」と聴いても返事がない。 バッグから何かを取り出した王ちゃんの目は、うっすらと涙を浮かべ、少し赤くなっているように見えたのは気のせいか・・・。 そして、バッグから取り出した物をNIJIに手渡しながら、次のように言ったのである。 「私のこと 忘れないでよ!!」 それは「言う」というより「叫び」に近かった。 お母さんの手作りだという、縦30cm・横8cmのペンダントのようなものである。 見ると、ハートの中でカップルが並び、手を繋いで仲良く座っているデザインがあしらわれている。 突然の事で、NIJIには何が起きているのか分からなかったが、即座に次のように返した。 「君のような可愛い子、絶対に忘れないよ!」 ここで言う可愛いとは、一応、顔貌も含むが、それに加えて、目標に向けて下向きに頑張る姿や、ミスをしても明るく振舞う姿などを指すのだが、彼女に伝わったかどうかは分からない。 肌身離さず持ち歩いていたのであろう。 「大切な物じゃないの?」 「大切な物だから上げるの!」 実は、こうなったのには心あたりがある。 観光最終日、出発時間が30分延びたので、その時間を利用してホテルのメモ用紙に中国語会話の本を見ながら、次のように書いた。 王小姐。 非常感谢你的这个时候。 这是一个很大的乐趣。 我来到日本很快成为女主人。 我会尽我所能。 欢呼的良好的工作。 再见! 日本語に訳すと、次のような意味になる。 今回は本当にありがとう。 とても楽しかったよ。 早く添乗員になって日本に来てね。 頑張るんだよ。 お疲れ様でした。 さよなら! そして観光終了後、バスを降りながら彼女に渡したのである。 NIJIは激しい尿意を模様していたので、バスの中に預けていた紹興酒をフロントに預けるやいなや、ホテル1階フロアのトイレに駆け込んだ。 彼女はメモを読んだ後、NIJIがトイレから戻って来るのを待っていたようである。 慣れない仕事に従事し、お客さんから嫌味などを言われる事もあったのだろう。 NIJIのツアーメンバーの中にも、失敗をからかったり、声を荒げる者がいた。 アシスタントとはいえ、「出来て当たり前」の仕事が要求されているのだ。 その中にあって、NIJIは愛娘にでも接するような気持ちで優しく対応していた。 失敗しても「失敗は成功の母」と励ましたり、添乗員という夢を褒めてあげたり、分かりづらい日本語の意味を教えてあげたりとか、etc etc …。 彼女もまた、NIJIの顔を見て「布袋様に似ている」と言って、「お金持ちになるよ!」などと口にした。 そんな会話を交わすうち、多少なりとも心が通い合っていたのかも知れない。 そんな中、任務の95%を終え、緊張がほぐれ、仕事中のミスを反省しながら心が折れそうになっていたのだろう。 そして、心ない批判の言葉を浴びせる者はあっても、「ありがとう!」とか「頑張れ!」などど言ってくれる人はいなかったのだと思う。 前述したように、彼女には写真では表現し切れない可愛らしさがあった。 いま思うに、お恥ずかしい話だが・・・彼女がバスに乗り込んで来た日から、年甲斐もなく親子ほども年齢差のある異国の子と、一種の擬似恋愛的な状態に陥っていたのかも知れない。 ソレを敏感に感じ取った彼女が、メモを読んで嬉しくなり、まるで恋人にでも振舞うような行動を取ったのかも知れない。 しかし、仮にお礼を言うのであれば、大切な物を差し出さなくても「ありがとう!」とか、「頑張るよ!」の一言で十分だったのだが・・・。 今となっては彼女が何を思って「忘れないでよ!」と叫び、お母さんから貰った大切な手作りペンダントをプレゼントしてくれたのか、とうてい窺い知ることは出来ない。 連絡先を交換している訳ではない。 だから彼女が夢を叶え、添乗員となって日本の土を踏む事があったとしても、NIJIはソレを知る術を持たない。 よって、2度と逢うことはない。。。 今はただ、海を渡って来た物言わぬペンダントが、静かにNIJIを見つめているだけ・・・。 ジャンル別一覧
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